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ニコニコお母さんには、子どもを伸ばすすごい力がある


前回に続き、花まる学習会代表の高濱正伸先生にお話をうかがいます。

「どうしてこんなにお母さんの気持ちがわかるのだろう……」
高濱先生の講演を聴いたり、著書を読んだりしていると、そんな疑問がふつふつと湧き上がってきます。
コロナ休校期間にYouTubeで公開された高濱先生の無料動画は、すでに3万回以上も再生され、世の親がどれほど先生のアドバイスを頼りにしていたのかを見て取れます。
どこまでも親子に寄り添う高濱先生の言葉に「お母さん」という存在への大きな敬意も感じました。


「メシが食える力」の選択肢はいくつもある


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かきほめ前回、やり抜く体験の大切さをお聞きしました。いま、わが家の子どもが夢中になっていることといえば、ゲームになってしまうのですが……それでも大丈夫なんでしょうか。

高濱先生:ゲームの話をはじめると取材が終わらなくなっちゃうのだけれど(笑)でも、かいつまんで話すと、ゲームはダメなんじゃないか、ということをわたしは20年以上言い続けてきたんですよね。

わたしの活動は、ひきこもりの子どもたちの支援からはじまっているのですが、そこで見たのはゲーム漬けの子どもたちでした。ゲームの世界にしか居場所がなく、現実の世界で生身の人とのコミュニケーションの取り方がわからない。そのことが、この子たちを不幸にしていると感じました。だから、ゲームには否定的だったんです。

ですが、最近、少しずつゲームに対する見方が変わってきています。
才能のある若い人たちに会うと、子どものころ、学校にも行かず、ゲームしかしていなかったという人がいるわけです。
たとえば「地方創生」をビジネスにしている小幡和輝さんというおもしろい若者がいるのだけれど、彼は、10年以上も不登校で、ゲームばかりしていたそうです。そして、彼の武器になっているⅠTの知識も、オンライン上で知り合ったゲームの仲間に教えてもらったという話を聞きました。

いまは「eスポーツ」というものもあり、そこで何億と稼いでいるプレイヤーもいますよね。
「メシを食う力」を養うため、わたしがこれまでやってきたことが「人間力学派」だったとしたら、「テクノロジー学派」みたいなものもあるのかもしれないなということは考えはじめています。
ゲームが「メシを食っていく力」になりうるかどうか、その結論はまだ出せないけれど、そこにも「道はある」ということは確かだと思います。ただし、ものすごくその道は険しいですが。


生活のなかの“体感”をなくさないで



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かきほめ:コロナをきっかけに、過剰な不安を子どもに植えつけていないか心配があります。たとえば、子どもが外で遊ぶのを嫌がったり、友達と触れ合うことをためらったり……。
身近にも、お子さんが友達に「近寄らないで!」って叫んでいるのを見て、とても悩んでいるお母さんがいます。

高濱先生:それは、これからの課題だなと思っているところです。花まる学習会はひとつの柱として野外体験を掲げています。外で遊び、友達とぶつかりあう体感が子どもの人間力を育むために非常に重要と考えてきたからです。
しかし、感染を予防する、密を避けるという観点からいうと、友達と触れ合うことはNGになってしまう。マスクをして人と距離を保った生活がこのまま2年、3年続くとどうなるのか。子どもにとって生身の人とのコミュニケーションの機会が減ってしまう心配はありますね。

友達にぶつかって怒らせてしまったとか、ふざけて上に乗っかったら泣かせてしまったというような経験を通して、子どもは人との距離の取り方、付き合い方を学びます。
コロナ禍のなかでも工夫して、そうした機会をなくさないようにしたいものです。
そうしないと、大人になっても人に触れられない、恋をすることもできない。そういう子どもたちが増えてしまうのではないかという心配はありますね。


疲れているお母さん自身をケアする時間を


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高濱先生:このペンの説明を聞いたとき、最初に感じたのは「お母さんの味方になるツール」だということでした。
コロナ休校中にとくに顕著だったけれど、子どもが宿題をやらないことに頭を抱えているお母さんはたくさんいますよね。わたしもいろいろな相談を受けたけれど、お母さんたちのほうが思い詰めて、どうにかなってしまうんじゃないかというのが目下の心配でした。

このペンは、家庭学習に取り組ませたい、でも、子どもにどう言い聞かせたらいいのかわからないと悩んでいるお母さんには、いいお助けツールになるんじゃないかと思います。

かきほめ:ありがとうございます。お母さんもほんとうはガミガミ言いたいわけじゃなく、子どもが楽しく勉強に向かえるようにサポートしたいという気持ちがあると思うんです。でも、それが家庭ではなかなかうまくいっていなくて。親子の気持ちのズレを解決できる商品をつくりたいというのが、しゅくだいやる気ペンの開発の出発点にありました。

高濱先生:お母さんが安定しているというのは、子どもを伸ばすためにいちばん大事なことです。ニコニコしているお母さんの子どもはいつもやる気にあふれています。一方で能力はあるのに、伸び悩んでいる子どもを見たとき、その背景にはやっぱりお母さんの問題があります。

子どもを追い詰めたり、不安にさせているお母さんは、自分自身が追い詰められているし、不安なんです。
どんなにすばらしい塾に通っても、家庭環境が良くないと、その効果は半減どころかマイナスになってしまう。だからおのずと、家庭の要であるお母さんを支えなければと思うようになり、お母さんのためのアドバイスが増えました。
子どもを伸ばすためにいちばん大切なのは、お母さん自身のケアなんです。

かきほめ:緊急事態宣言が解除され、子どもが学校へ行けるようになりました。けれど、いま、親のわたしが何もやる気が起きないんです。溜まっていた掃除や片づけをしなくてはと思うのだけれど、家のなかはいまだにぐちゃぐちゃのままで……。
先日、「マスクを入れるための新しい巾着袋を持たせるように」という手紙が学校から来たのですけど、正直なところ「お裁縫は勘弁して」って思いましたね。

高濱先生:ははは。そうだよなぁ。わかるわかる。そういうときは、とにかく頑張った自分をほめてあげればいいんじゃないかな。そして、どうしてもしんどいときは、ただ自分を認めてくれる仲間に話を聞いてもらうようにしてください。
お母さんという生き物は不思議で、自分の頑張りをただ認めてもらうこと、ただ気持ちをわかってもらうことで、力を回復できるんですよね。


つながりのなかに身を置く


かきほめ:ずっと疑問だったのですが、高濱先生はどうしてそんなにお母さんのことがよくわかるのですか。先生の動画に「高濱先生は、ほんとうは女性なんじゃないか」っていうコメントをつけている方もいらっしゃるくらいです。

高濱先生:そうそう。それ、よく言われます。わたしは、ただただ、子どもを伸ばしてあげたい、「メシが食える力をつけてあげたい」と思っています。でも、そのためには、お母さんのことをもっともっと知らなければならないんだなと気づいたんです。

ある時期、公園に張り込んで、集まって話しているお母さんたちを観察したことがありました。どんなことを話しているのかよくよく聞いてみたんです。
それから、年間150回以上もある講演で、お母さんたちからもらうアンケートは隅々まで読みました。「あなたは講演でこう言っていたけど、お母さんはただ話を聞いてもらいたいだけなのよ」って書かれてあったりして。最初のころは「話を聞くだけ? そんなことしてなんの意味があるんだ?」って思っていたけれど、そういうメッセージを何人ものお母さんからもらって、納得せざるを得なかった。こうやって少しずつお母さんの気持ちを想像できるようになりました。


そして、お母さんについて学べば学ぶほど、お母さんがどれほどすごい存在なのかということもわかるようになりました。命をつないでいく、ほかの誰にもできないこの偉業をたったひとりで担っている。そこに尊敬の気持ちが生まれました。

かきほめ:たしかに。先生のお母さんへのアドバイスは、ほんとうに優しいです。お父さんにはたまに厳しい言葉もありますが(苦笑)、お母さんのことは絶対に悪く言わないと感じています。

高濱先生:やはり、お母さんはすごく大変なことをしているとわかっているから、追い詰めるようなことは言いたくないですよね。ですが、わたしの妻に言わせればわたしは「まだまだ」なんだそうです(苦笑)。上には上がいる。ただ、世の中のお父さんたちがお母さんのことをわかっていなさすぎるというのは、わたしも感じています。


自粛期間に受けた相談では、夫婦関係が危機的な状況になっているという話をいくつも聞きました。お父さんにはお母さんを支えてもらいたい。お父さんにももっと頑張ってもらいたいけれど、いまは緊急事態だからのんびりなことも言ってられない。
コロナ禍のなかで、お母さんたちがすぐに実行できるアドバイスはなんだろうと考えて、ひとつだけ伝えました。それは、ひとりで抱えないで、自分の頑張りを認めてくれるつながりのなかに身を置いてくださいということです。

たとえば、HUC(母親アップデートコミュニティ)というのがありますが、ここで徹底されているルールがとても大事なんです。そのルールというのは「誰も否定しない」というだたひとつ。ここに登録しているお母さんたちはみんな、自分の目標をもって、キラキラしている。共感力ってこんなに人を輝かせるのだと驚きます。
お母さん自身が、自分をケアすることの大切さに気づいて、自分が元気になれるつながりを見つけることがいまの大変さを乗り越えるためにはとっても大切だと思います。


暗い気持ちを吐きだすことも大事


かきほめ:コロナウィルスについて対応策がまだよくわかっていないなかで、親としていろいろな決断をしていかなければならないプレッシャーを感じています。たとえば、子どもをスイミングスクールには行かせてもいいのかどうか。炎天下で遊ぶときもマスクをしなければならないのか。ほかのお母さんとも話すのですが、自分と意見が違うと不安になったりします。

高濱先生:そうですね。やっぱり「誰も答えを持っていない」というのは頭に置いておくのがいいでしょうね。そのうえで、自分が信じることをやっていくしかない。
そもそも、子育てには正解がありません。だから、お母さんは、誰でも、いつでも不安であたりまえだと思います。

かきほめ:お母さんが、自分の不安とうまくつきあっていくコツはあるでしょうか。

高濱先生:イライラしたこと、不安になったこと、そういう暗い感情は、自分のなかにため込まないで吐きだすことが大事だと思います。ひとりですべてを抱え込むことが、余裕をなくす原因だからです。
たとえば、暗い感情を書きだすためのノートを持っておくのはいいですよ。「もう子育て嫌だ!」とか「旦那、いいかげんにしてくれ!」とかね。言葉にして書き出してみるだけでも、スッキリするし、余裕ができるんです。


人生の目標は「遠回りの旅」のなかにある


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かきほめ:自粛期間中、花まる学習会は、早々と授業のオンライン化に対応されていましたね。また、家庭での過ごし方のアドバイスを無料で配信されたりもしていました。花まる学習会の「親子を支えよう」という思いの強さや結束力を感じました。

高濱先生が、花まる学習会の理念のひとつとして「メシが食える大人に育てる」という、子どもの人生を丸ごと支えるような大きな目標を掲げられたのはどういった思いがあったのですか。

高濱先生:花まる学習会に思いのあるいいメンバーが集まってくれたのは、気づいたらそうだったとしか言いようがなくてね。もしかしたら神のお導きのようなものがあったのかもしれないと思います。

わたし自身が、どんな夢であれば自分の人生をかけられるか考えたとき、「教育だ」というのは長い道のりを経てたどりついたひとつの結論でした。しかし、たとえば「名門校への合格者数」という目標は、わたしにとってはすこし虚しく感じられました。それに、受験勉強を教えるだけなら、わたしより教え方の上手な人はたくさんいるとも思いました。
花まる学習会の子どもたち全員がトップの成績は取れなかったとしても、全員に「生きていく力」を身につけさせることはできるのではないか。それが「メシが食える力」という言葉につながりました。

人生の目標を見つけることには、多くの時間を必要とします。
わたし自身も、進むべき道を見つけられず、世の中から置いていかれている気持ちになったり、焦って自分にイライラしたことは一度や二度ではありません。さきほど話した「暗い感情を書き出すノート」は、わたし自身がずっと日記を書き続けてきたからこそ言えるアドバイスなのです。
だから、身をもって、あきらめずに探し続ける時間が大事だったと言えます。

これから、先が見えない落ち着かない時間がまだしばらくは続きそうですが、お母さんもお父さんも、どうか、焦らないでほしいなと思います。
子どもが、ちょうどいい目標をじっくり探せるよう見守ってあげてください。応援しています。


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【PROFILE】高濱正伸(たかはま・まさのぶ)さん
1959年熊本県生まれ。東京大学・同大学院修士課程修了。1993年、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。主宰している野外体験のスクールはとても人気があり、年間約1万人の子どもたちが参加している。また、父母向けに行う講演会は、年間150回以上開催され、現実的で丁寧なアドバイスは母親の支持を受け「子育てに悩む母親の救世主」とも称されている。
「情熱大陸」や「カンブリア宮殿」「ソロモン流」といったテレビ番組でも紹介され、熱血先生の姿には大きな反響があった。算数オリンピック委員会作問委員を務める。
著書は『考える力がつく算数脳なぞぺー』シリーズ(草思社)、『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』(青春文庫)、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)など、多数。

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テキスト・岡田寛子/イメージ写真・上野俊治

高濱先生



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コクヨの「しゅくだいやる気ペン」プロジェクトから生まれた“親子の学び”を応援するメディアです。教育専門家の方々へのインタビューをもとに、家庭学習を通じたより豊かで愛情あふれる親子関係づくりをサポートする記事をお送りします。