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お母さんが「夢」と「仲間」を持つと、子どもはもっと幸せになれる

前回に続き「幸福学」の研究者である前野マドカ先生にお話をうかがいます。

「子どもに幸せになってほしい」というのは、親なら誰しも願うことですが、今回は、お母さんが「夢」や「仲間」を持つことで、子どもをもっと幸せにすることができると教えていただきました。

子どもを思うあまり、自分のことはつい後回しになりがちなお母さんが多いかもしれません。かつてマドカ先生も「子どもを立派に育てるのが自分の夢」と思っていた時期があったと話してくださいました。

コロナ禍の不安のなか、家族を守るために頑張っているお母さんたちが、自分自身をケアし、子どもにより深い愛情を注げるヒントがみつかれば幸いです。

いまは、みんながチャレンジをしているとき


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かきほめ:休校になってもう2か月近くが経ちます。家庭学習を頑張ってはいるものの、このままでは子どもの学習に遅れが出るんじゃないかという心配があります。

マドカ先生:そうですね。もとの生活にいつ戻れるのかもわからないなか、親御さんの心配は尽きませんよね。けれど、この状況にあるのは自分一人ではない。みんながこの試練に立ち向かっているという意識を持ちつづけることも大事です。

もし、いま何か不都合なことが起きても、私はまず「しかたがないよね」と受け入れようと思っています。そのあとで「じゃあ、この状況でも、どんなことだったらチャレンジできるか」と考えてみる。それが負の感情に引きずられないコツなんです。

感染の不安や自粛の疲れが出てくるなか、私たちは悲観的に考えがちです。
でも、子どもというのはそういう大人の感情をすごく察知しますから、家での時間を豊かに過ごすためには、まずは前向きに考える努力が必要です。

学校へ行くことが当たり前ではなくなったからこそ、学べる幸せに気づくこともできるのではないでしょうか。親も子どももこの状況を、さらに幸せになるためのチャレンジだと考えるとすこし前向きになれるかもしれません。

子どもが「ゲーム」に夢中なときはどうすればいい?


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かきほめ:前回、休校中に子どもの好きなことをみつけてみようというお話がありました。我が家でも新しい本を買ってみたり、DVDを見せたりするのですが、結局子どもがやりたがるのは「オンラインゲーム」なんです。子どもの好きなことをさせてみるといっても、それが「ゲーム」ばかりなのはあまり良くない気がするのですが……。

マドカ先生:ゲームとの付き合い方はどのご家庭でも悩まれるポイントですよね。
我が家でも、長男はゲームが大好きでした。私も、他のご家庭の例にもれず、「いつまでやってるの!」「いいかげんにしなさい!」という小言を繰り返すお母さんでしたね。

でも、我が家がほかのご家庭と違っているとしたら、それは、夫が子どものことを徹底的に信じていたということでしょうか。
夫は、息子にゲームをやめなさいとは一度も言わなかったように思います。
たとえ、試験の前にゲームをしていても「試験の前にゲームができるなんて将来大物になるなぁ」とか「君が自分で考えてゲームをやるって決めたのだからお父さんはそれを支持するよ」と、嫌みでもなんでもなく本心から息子に言っているようでした。

それを聞いた私は「そんなわけないでしょ!」と怒ったりしていたのですが、でも、夫は正しかったと、息子と話していてわかったんです。

あるとき、「僕がゲームを好きになったのは、禁止されたからだよ」と、息子は言ったんです。受験勉強など、やるべきことをやるために、親として「ゲームは1時間まで」というルールを息子に課していました。そのルールも、私としては話し合って決めたつもりでしたが、息子は「禁止された」と感じてしまったようです。そして、それが息子の「ゲームへの執着心」につながってしまった。
ゲームと受験勉強のバランスを息子の意見も聞いたうえでルールにできたらよかったなという反省があります。


子どもの「ワクワク」感の源を掘り当てる


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マドカ先生:友達に会えないいま、子どもがゲームに夢中になるのは、ゲームそのものが好きだというより、オンラインで友達とつながれることがうれしいし、楽しいという側面もあるのかもしれませんね。

かきほめ:たしかにそうですね。我が家の子どもたちももっぱら「オンラインゲーム」をしています。(それゆえ、取材中に映像がときどき乱れました……苦笑)。

マドカ先生:子どもが夢中になっているものについて、一度、じっくり話をしてみるというのはどうでしょうか。「ゲームが好き」だけで終わらせるのではなく、ゲームのどういうところが好きなのか、何をおもしろいと思っているのかを掘り下げて聞いてみるんです。自分が興味を持っていることに、親が興味を持ってくれるというのは、子どもにとってはとてもうれしいことなんです。

かきほめ:なるほど。ゲームを目の敵にするんじゃなく、ゲームについて話すことで子どもとの信頼関係をつくれたらいいですよね。

マドカ先生:たとえば、「敵をやっつけたい」と答えたら、その子は「目標をクリアすること」が好きなのかもしれない。だから、機械を修理するとか地名を全部覚えるといった「達成感」が味わえる体験に興味を持つかもしれません。
「早いスピードで操縦するのがおもしろい」と答えたら、実際にサッカーなど動きの速いスポーツをしてみる。グラウンドを走り抜ける感覚と似ていることに気づくかもしれません。

リアルな体験で得た幸福感は長続きするというデータがあります。ゲームのほかに自分を満たす体験を見つけられたら、子どもはそちらのほうがきっとおもしろくなるはず。そうすれば、ゲームの時間は自然と少なくなると思います。

かきほめ:なるほど。ゲーム自体が、子どもが好きな「疑似体験」の寄せ集めですよね。それを分解すれば、子どものほんとうの「好き」がみつかるかもしれないということですね。


お母さんも夢を持とう


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かきほめ:マドカ先生は、アメリカで生活しておられたこともあるそうですが、日本のお母さんとアメリカのお母さんの違いはどんなところでしたか。

マドカ先生:あるとき、子どもを公園で遊ばせていると、アメリカ人のお母さんから「マドカの夢は何?」と聞かれました。それで私は「この子たちを立派に育てることかな……」と答えたんです。すると、とても驚かれました。「何言ってるの?」って半分呆れたような顔で言われてしまったんです。

いま、日本のお母さんたちを見ていると、子育てを一生懸命して、自分の人生は後回し。それがいい母親だと思ってしまう。でもそれって、じつは、自分の人生を生きていないということですよね。アメリカ人のお母さんから見たら、当時の私もきっとそんなふうに見えていたと思います。

お母さんが子どもの人生に期待しすぎてしまうと、子どもは窮屈になります。
そして、自分で考えることをやめ、お母さんの決めたとおりにしか行動できなくなってしまいます。

アメリカのお母さんたちは子育てのほかに、ちゃんと自分の夢を持っていました。それが彼女たちをとても輝かせているように見えました。
お母さんも自分の夢を持っていい、いや、子どものためにも持たなくちゃいけないんだなと思いました。

子どもに勉強をさせようと思うなら、お母さんが本を読んだり、一生懸命調べ物をしたりする姿を子どもに見せるのがいちばん効果的なんですよ。


お母さんも仲間を持とう


マドカ先生:子育てというのは、お母さんにとってはいつも挑戦ですよね。だからこそ、信頼できる仲間がいるととても心強いと思います。
たとえば、自分では気づかないような子どものいいところをほかのお母さんがほめてくれただけで気持ちが前向きになりますよね。お母さんの心にゆとりができると、子どもをその日、ガミガミ怒らなくて済んだりします。

子どもの成績が上がらなくて心配していたお母さんが、仲間に話を聞いてもらえてすっきりしたあと、子どもがなんだか疲れているなと感じたそうです。だから試験の前だったけれど「今日は疲れているみたいだから早く寝たら?」と声をかけました。そうしたら、子どもはその日は早く寝て、次の日に早く起きて勉強していたそうです。

お母さんの気持ちが安定していると、子どもって頑張れるんですよね。

かきほめ:子どもが安心して勉強に向かうためには、お母さんも頼れる仲間を見つけ、イライラ・ピリピリしないことが大事なんですね。ですが、子育て中のお母さんは、外につながりがないことも多く、孤独になりやすいと感じています。

マドカ先生は、中学受験でもお母さん同士の良好な関係を築き、PTAの会長もご経験されています。いろいろな価値観を持っているお母さんたちとうまくやっていくコツというのはあるのでしょうか。

マドカ先生:人と良好な関係を築いていくコツは三つありますが、とてもシンプルです。それは「笑顔」と「挨拶」と「感謝」を欠かさないことです。いつも笑顔で挨拶をし、どんな小さなことにも「ありがとうございます」と言う。そうすれば悪く思う人はきっといません。

幸福学では、多様な価値観を持っている人と付き合うことが幸福度を高めるということがわかっています。だから、お母さん自身がいろいろな人と付き合うことは、自分の幸せだけでなく、子どもが多様な価値観を受け入れて生きていくために重要なことなんです。

かきほめ:お母さんたちとのチームワークをつくるうえで、どんな発見や苦労がありましたか?

マドカ先生:専業主婦のお母さんたちは、自分がお金を稼いでいないことで「社会の役に立っていないんじゃないか」という引け目を感じている人が多かったです。それを助長するかのように、旦那さんから「PTAなんかお金にならないことをやる時間があるなら働きに出れば?」と言われたというお母さんもいました。

私自身も専業主婦でしたが、会長をやってみて、組織を運営するための大切なことをPTAで学べたという実感がありました。そのような貴重な学びを子育ての延長でできたということは、本当にありがたいことでしたし、いまの私の力になっていると思っています。
また、私は、夫からいつも「マドカが家をしっかり支えてくれて、PTAでも頑張ってくれているから安心して働ける。僕の収入の半分はマドカが稼いだものだと思ってほしい」と言われていたんです。だから、親しくなった専業主婦のお母さんたちにはその言葉をシェアしていましたね。「あなたも、旦那さんの給料の半分を稼いでいるのよ!」って。

「ワーキングマザー」のお母さんたちは、逆に、忙しくて子どもをきちんと見れていないんじゃないかという不安を感じていましたし、学校行事にも本当は子どものために協力したいけれどそれができないことに罪悪感を持っているということを知ることができました。
だから、「働いているお母さんたちは、役員をやりたくてもできないかもしれないよね」とか「専業主婦でも自分の貴重な時間を使ってここに来ているのだから、これを成長につなげられたらいいよね」というように、お互いの本音の部分が伝わるような発言をいつも心がけていました。


学びをシェアすることでお互いを高め合える


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マドカ先生:女性というのは共感力が高いことが知られています。そして、シェアによって成長できるという研究結果もあるんです。自分の体験をほかのお母さんたちに話すことが、自分だけでなく、相手の成長にもつながるんです。

かきほめ:たしかに、お母さんの話はいつも子育ての参考になりますし、身近なお母さんが新しいことをはじめたときに、自分も何かをやってみようかなという気持ちになりますね。

マドカ先生:そうなんです。自分の体験が、誰かの人生を好転させるきっかけになれるというのは素敵なことですよね。
ただし、心にとどめておきたいのは「わかる! わかる!」という共感でつながれる一方で「私はそうは思わない」「私は違う」という人を排除しがちだということ。
さきほどもお話ししましたが、多様な価値観を受け入れることは、それだけ幸福度を高めます。違った価値観もあっていいという心の広さが幸せを呼び込むのです。

さきほど、アメリカのお母さんのお話をしましたが、日本のお母さんはとくに共感力が高く、周りに配慮のできる人が多いと思います。それは、家庭を守っていくうえでもお母さんたちの強力な武器になることは間違いありません。
でも、その一方で、子どものことを気にしすぎてお母さん自身が気持ちを言えなかったり、先回りして子どもの問題をなんでも解決してしまうとういうのは、お互いにとって良くない結果になるでしょう。
せっかくの高い共感力は、家族や他者に対する感謝の気持ちを表現したり、子どもへの愛情を伝えるというように、より良いアウトプットのために使えたらいいなと思います。


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【PROFILE】
前野マドカ(まえの・まどか)さん

慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科付属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。EVOL株式会社代表取締役CEO。IPPA(国際ポジティブ心理学協会)会員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、研修活動及びフレームワーク研究・事業展開、執筆活動を行っている。
夫である前野隆司氏とともに「幸福学」を研究し、幸福になるための実践的な知識を伝えることをライフワークとしている。中学受験やPTAの会長も経験した二児の母として、子育てに悩むお母さんや、これから結婚したい、子どもを産みたいと考えている女性たちに対する、わかりやすく親切なアドバイスが共感を呼んでいる。


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テキスト・岡田寛子/撮影協力・前野隆司/イメージ写真・上野俊治

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